天職!トイレにかける物語
No.23 東京都八王子市/産業ブランディング(上)

 「再建王として知られ、後に佐世保重工業の社長になられた坪内寿夫さんに関する本を学生時代に読
んで以来、自分は35歳までに独立すると決心していた」と話すのは、産業ブランディング(東京都八
王子市)社長の佐竹明(37歳)だ。

 そのため大学卒業後の勤め先は、独立後にプラスになる仕事を計画的に選んでいった。新卒時は金融
機関、その後は損害保険会社、そして不動産運用やホテル開発等を営む会社を経験。独立直前の不動産
関連会社では、採用面接時に独立希望であることをはっきりと伝え、在職中に宅地建物取引主任者の資
格も取得。新興市場に株式を上場していたこの企業を、晴れて計画通りに退職した34歳の佐竹の役職
は「営業本部長・執行役員」だった。

 勤め人として目の前の仕事に没頭することが今後の自分の糧になる。そう信じて仕事に邁進する一方
で独立への資金準備1200万円を地道に蓄え、情報収集をしていた佐竹は、ある展示会でトーチ出版
のブースを見つけ、フランチャイズ(FC)の専門誌である『FRANjA』と出会う。そこでアメニ
ティ(本社・神奈川県横浜市)社長の山戸里志による「御手洗銀三のトイレコロジー」というコラム連
載を見つけ、早速バックナンバーを取り寄せて一気に読み込んだ。世界一の高齢化社会ニッポンを考え
、適所介護FCなど他のFCの検討もしたが『アメニティネットワーク』ほど、ピンと来るFCはなか
った。

 佐竹の中でアメニティネットワークに感じた優位性は、@売りっぱなしではないストック型ビジネス
。一度契約が取れれば、毎月売上高が積み上がって経営が安定し、銀行の担保にもなるA店舗ビジネスのような“待ち”の体制ではなく“攻め”のビジネスである点が営業畑の自分に合っているBトイレと
いう人が一瞬ためらう仕事だからこそ謙虚に仕事に向き合え、従業員を雇う日が来ても成長させてあげ
られる仕事になるC大資本が参入しにくい労働集約型ビジネスであるDインターネットが普及しても市
場が減少し難い事業である……。

 実は佐竹は数年前からトイレ掃除を毎日実行していた。営業本部長として1ヵ月だけ営業目標に達成
できなかった日から自分への戒めで始めたのだが、トイレに向き合う時間の素晴らしさを実感していた
のだ。そんな決断の時、佐竹は偶然、新宿のある高層ビルのエレベーターでアメニティの制服を着た若
者と遭遇する。
                                   (つづく)

『FRANJA』(フランジャ)83号掲載 2014年11月15日発行

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