天職!トイレにかける物語
No.22 愛媛県松山市/キホク(下)

 愛媛県松山市でレンタルおしぼり業のトップシェアを誇るキホクが、二代目の上田剛士を代表者に据
え、新規事業としてトイレの予防型メンテナンスサービス事業『アメニティネットワーク』にフランチ
ャイズ(FC)加盟をしたのは2000年10月。身を持って創業の大変さを知ってほしいという父の
願いにより、上田はアメニティ(本社・神奈川県横浜市、山戸里志社長)事業に没頭する。

それから約10年後の2010年2月に事業承継が成され、上田が代表取締役に就任。売上高が右肩下
がりのレンタルおしぼり事業の改革に取りかかるべく、上田は品質向上、配送ルートの見直しなどによ
るコスト削減、低価格からの脱却、販路拡大を掲げ全力でスタートを切る。だが、社長就任2ヵ月後に
古参社員幹部の反乱に遭い、従来事業の社員のほとんどが辞めてしまうという事件が起こる。

「今となっては、あの時に自分の腹は据わったのだと思います。新人への引き継ぎは全部自分でやり切
り、不動産部門で独立していた弟が手伝ってくれて兄弟の有難みも痛感。結局1年間で約100件の顧
客を持っていかれて大変でしたが、現場に出て気付かされたのは、社員が自社の不平不満をお客様に漏
らしていたことが分かり『これでは売上も下がるわけだ。自分は社員の事を何も考えていなかった。社
員と共に学び成長していかねば』と、自分が何をすべきかが明確になりました」と上田。

今では4年前に採用した岡田健が、アメニティ事業の専任者として上田と共に頑張っており、上田に続
き岡田も「トイレ診断士1級」に合格。また、キホクには現在、20人の従業員がいるが、そのうち障
がいを持つ従業員を8人も雇用しているという。「彼らは真面目で、ひとつの仕事に黙々と取り組みま
す。他の従業員が触発されることも多くてかけがえのない存在。レンタルおしぼり事業では検品作業、
アメニティ事業ではトイレの黄ばみ取りの作業などで活躍している」そうだ。

「この4月に某金融機関(8階建ビル)のトイレメンテナンスの契約が取れました。こういう大きな仕
事が取れると士気が高まりますが、うちの強さはアメニティFCの中で1、2を争うほど解約率が低い
こと」と胸を張る上田は、今後も既存顧客の満足を一番に掲げつつ、新たに”女性営業部隊”を立ち上
げる目標も持っている。「アメニティ事業の今後は、おしぼり事業と同じ大きな柱となる日は近いだろ
う」と、上田は自信を見せていた。

『FRANJA』(フランジャ)82号掲載 2014年9月15日発行

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