天職!トイレにかける物語
No.12 【番外編】山戸里志/アメニティ創業(下)

 1970年代半ば、アメニティの創業社長である山戸里志は、コンサルタント会社で家
電メーカーの販促店向けのインストラクターとして活躍していた。そして、夜になるとこのコンサルタント会社の日本経営センター社長と模索した新規ビジネス「トイレの自動噴霧型芳香剤」を、飲食店を顧客先として新規開拓に勤しんでいた。昼夜休む間もない仕事漬けの日々が続いたが、「売れることが楽しかった」山戸にとって、それは何の苦でもなく、この交換式のトイレの芳香剤を置いてくれる顧客数は瞬く間に800件を超えるまでになった。


 そして、このトイレの芳香剤交換業が「売り手よし、買い手よし、世間よし」の"商人道"を具現化したビジネスだったことも、山戸がトイレの世界に魅了されていった大きな 理由だろう。76年、山戸は日本経営センターの代理店として神奈川県横浜市の自宅を事務所に、東陽商会を設立して独立。これが現在の『アメニティネットワーク』のトイレメンテナンス ビジネスの創業となる。元来、営業マンの手腕を持つ山戸は初年度2000万円、4年後 に5000万円、7年後には年商1億円を突破し、ビルメンテナンス業にまで業容を拡大していった。

 順調に伸びていく業績の傍ら、毎月の自動噴霧機の交換先から「芳香剤を置いてもトイレがクサイ」という声が挙がる。そこで山戸は臭いを香りで消すことに限界を感じ、臭い の根源を断たなければ意味がないと思い始める。そして研究を重ねた結果、便器にこびり ついた頑固な汚れとトイレの臭いの根源は「尿石」にあることに辿り着いたのだ。


 今でこそ尿石という言葉はよく開かれるが、当時は存在すら知られていない未開拓の分 野。外部からの支援も得ながら、この尿石発生のメカニズムを解明し、尿石を発生させない薬剤の開発に着手。一方で、その薬剤を入れる容器として、男性の排尿時の尿跳ねによ る飛散を防止する容器の開発にも成功した。これが、今もなおアメニティの主力商品であ る『ピピダリア』だ。
 この「トイレの予防型メンテナンス」という視点を得た山戸は、次なるステップとして 89年12月6日にアメニティを設立したのだった。

                                   (つづく)

『FRANJA』(フランジャ)72号掲載 2012年12月14日発行

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