天職!トイレにかける物語
No.03 京都府京都市/スマイル(上)

 2000年2月、京都府宇治市にある実家の自室を事業所に、アメニティとフランチャイズ(FC)契約を締結して脱サラで開業したのが、スマイル(当時・アメニティソフトスペース)の代表取締役である近藤明。30歳の時だった。

 近藤は、大学を卒業後に商社に入社し、営業部に所属。官公庁向けの資材の販売を行う営業マンだった。近藤が26歳の時に、その商社がお菓子の小売販売のFCに加盟し、その店舗運営の責任者として抜擢された。
 それまでの近藤は、営業マンとして"売り上げ"という数字を追いかければよかったが、店舗運営を任されたことで、売り上げだけでなく、いかに利益を上げるかを問われることになった。ここで、初めて"経営"に触れた近藤は、同時にその面白さを実感したのだった。

 この経験から、近藤の中で徐々に"独立"という思いが芽生える。店長として業績を着実に伸ばしながら、事業家への思いが「明確な目標」へと変わっていった。

 ただ、どんな事業で独立するのかと見渡してもどのマーケットも成功の絵のイメージがなかなか湧かない。そんな折に、小売業の店舗運営の中で "トイレ"の衛生管理は、来店客へのサービスとしても、従業員のための職場環境の保全としても、大きなウエイトを占めていることに気が付く。
 人がやらないこと、しかし、確実なニーズがあるトイレのビジネス。漠然とではあったが、近藤の中で方向性が定まっていくのを感じていたという。

 そんなある日、独立開業雑誌でトイレビジネスのFC展開をしているアメニティを見つけた。「まさに自分が思い描いていたビジネスだ!」と、近藤は驚きさえ感じた。

 すぐさまアメニティの本部がある神奈川県横浜市まで出向いた近藤は、トイレに半生を捧げている創業者で代表取締役の山戸里志に触れる機会を得たのだった。トイレへの想いを熱く語る山戸の姿と、改めて知るトイレビジネスの仕組みに、近藤は独立の夢をこのビジネスに懸ける決心を固める。

                                   (つづく)

『FRANJA』(フランジャ)63号掲載 2011年6月15日発行

天職!トイレにかける物語 インデックス項へ