御手洗銀三のトイレコロジー
No.52 トイレ診断士の挑戦

 前回の本コラムでもお伝えしたが、渋谷区が募集した公衆トイレのネーミングライツに我が社が応募し、見事にその第一号として決定した。命名権を手にした我々は「トイレ診断士の厠堂(かわやどう)」と命名した。
 アメニティという社名の表記はない。

 
広告塔として応募した以上、アメニティネットワークの最大の特徴である人材群「トイレ診断士」の道場として使いたかった
からである。「渋谷区立公衆トイレのネーミングライツスポンサー企業募集」という新聞報道を見つけたのは、今年の二月中旬頃だったと思う。その日の夕刻、二人の社員から「社長、やりましょうよ」と言われたのが最初だった。
 
その後すぐにフランチャイズ店のオーナーたちからも「アメニティネットワークを知ってもらうチャンスだと思う」と連絡が入った。

 折しも、当社は二月三日の節分の日にグリーンシート銘柄として指定を受け、株式公募の真っ只中だった。この超多忙の時に「公衆トイレのネーミング」というのは試練なのか、好機なのか……。きっと「節分公開」で福を呼んだに違いない!と思い至った。

 翌日から、早速、この公衆トイレの調査に走った。予想はしていたものの、昼夜を徹しての診断では、解決すべき課題が山積していた。
 その問題山積のトイレも、今やトイレ診断士の手によって見違えるような環境のトイレに変貌した。あとは、この環境を維持管理していくことが我々の使命だ。

 さて、今回の課題にもうひとつ加えておくべきことがあった。それは、行政の対応だ。当初、渋谷区との契約は四月一日の発表予定だったが、大幅な遅延を余儀なくされて、五月十二日の初お目見えとなった。遅れの最大の原因は、区の行政体制にあったようである。窓口となった担当者三名は、実に熱心に対応してくれたものの、審議や最終決裁が大幅に遅
れたのである。
 もしも、民間であれば納期不履行でキャンセル、若しくは賠償請求ものである。即断即決!それがトップの責任であり、物事を進める原動力である。

 「トイレ診断士の厠堂」で公衆トイレが変わり、行政をも変えられるか。我々の挑戦は始まったばかりである。

『FRANJA』(フランジャ)52号掲載 2009年7月15日発行

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