御手洗銀三のトイレコロジー
No.51 トイレにネーミングライツ!

 「トイレに名前をつける権利を与える」という前代未聞の企画が、しかも、自治体から発せられた。東京都渋谷区が区内の十四ヵ所の公衆トイレのネーミングライツの募集を行ったのだ。

 この不況下の税収不足の自治体の知恵である。渋谷を訪れる人たちと区民サービスのために、公衆トイレは欠かすことのできない施設だ。某テーマパークのトイレで、清掃スタッフが便器の一つひとつに名前をつけたことで愛着が湧き、トイレ清掃に情熱を持って取り組んだことで、とてもきれいな状態が保たれたという話は有名だ。

 だが、今回のトイレは、公衆トイレである。二十四時間開放している公衆トイレの管理は、4K(臭い・汚い・恐い・暗い)対策や故障・修理の対応を含めてきわめて困難で、相当な予算が本来必要となる。
 しかし今、自治体の予算は縮小傾向にある。そうした状況下で、公衆トイレ管理の予算を削減すればするほど無法状態となり、地域の迷惑施設″になってしまう。

 そこで考えたのが、ネーミングライツで企業の広告塔として使わせる案だ。権利を得た企業にとっては、渋谷を訪れる、あるいは、地域の人々への社会貢献と共に、渋谷という土地柄から、多くの利用者や通行人に自社を知ってもらえる広告としての魅力がある。
 しかし、臭くて汚れた公衆トイレに企業の看板を載せるのは「逆の宣伝効果」になりかねない。当然、ネーミングライツで応募受託した企業にとっては、管理に無関心ではいられなくなる。自治体の限られた予算以外にも自社から管理費用を捻出することも応じざるを得ないだろう。
 管理の最も難しい公衆トイレが、ネーミングライツによって明るくきれいな快適なトイレに変身できれば自治体の成功事例として新しい道を切り開くことになる。

 そんな施設の管理は「トイレに因んだビジネスネームを持つわが社のトイレ診断士やトイレ管理士の腕の見せ所」と、早速応募したところ、当社に渋谷のNHKホール正面のトイレのネーミングライツが与えられた。是非、お近くに起こしの際には、アメニティ管理のトイレを利用してみてほしい。

『FRANJA』(フランジャ)51号掲載 2009年5月15日発行

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