御手洗銀三のトイレコロジー
No.48 中国への「手紙」

 北京オリンピックとパラリンピックが幕を降ろした。世界204ヶ国が参加した祭典は、海外から、どれくらいの人々がこの中国の地を訪れたのか。

 中国政府は「開かれた中国」を懸命にアピールしようとしていたが、一方で、オリンピックの影に国家の犠牲になった大勢の中国人たちがいたことも、外国のマスコミによって報道されている。
 外国人報道記者の取材も、裏の中国文化に焦点を当てようとすると検閲が厳しく、記者やカメラマンが連行されたという。

 また、開催前から北京の大気汚染や環境問題が大きな懸念事項となっていたが、中国のトイレ事情も報道が欲しかった。おそらく、競技場や選手村、またその周辺は整備された綺麗なトイレが並んでいたのであろう。だが、その1歩外でのトイレの実情はどうだったのかを知りたかった。
 日本で生まれたトイレ診断士が、中国のトイレ事情を見たら、どんな課題を見つけて、どんな改善ができるかを知りたいからである。

 昔、真似ごとで、中国語を習い始めた時、日本語と中国語は同じ漢字でもその意味が違うといって教えられたのが「手紙」だ。
 自分の思いや情報を伝えるための日本の「手紙」が、中国語ではトイレットペーパーの事だと教えられた。
 ただ、今では、中国でもトイレットペーパーの包装紙には「衛生紙」とあるが「手紙」とは書いていない。
 最近の中国では地域や世代によって、言葉の使い方に違いがあり、普通は「衛生紙」を使う場合が多く、「手紙」は少し古くさい表現になっているそうだ。

 今こそ、開かれた中国の動向に注目したい。環境問題は、もはや自国のことだけだとして済まされない時代を迎えている。
 さあ、長い歴史と様々な文化を持つ中国の人々に「環境問題はトイレから始まる」という手紙を書くとしよう。
 もちろん、中国への手紙だから、紙は中国製の手紙 (トイレットペーパー) にしたためよう。

『FRANJA』(フランジャ)48号掲載 2008年11月15日発行

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