御手洗銀三のトイレコロジー
No.42 We are The Unkings.

 仕事に惚れた者同士が酌み交わす酒は旨いもの。ほどほどに酔いがまわれば、お互い饒舌になり、場も一段と盛り上がる。

 二十代の若さで独立・開業で『アメニティネットワーク』にフランチャイズ加盟され、今や三十人程の社員を抱え、自社ビルを持つまでに成長されたM社長との酒宴の席でのことだ。
M「最近、運気について研究しているのですが、アメニティのトイレの仕事は運気上昇にあるのが分かります」
銀「ほう、なぜそう思うの?」
M「やはりトイレを磨いているからでしょうね。苦労しても、その後に必ず良い結果が出る。今があるのも開業から十数年間、快適トイレのために汗を流してきたからだと思います」
銀「そういえばこの仕事で頑張った人は皆、いい人生を送っている。トイレの神様が見ているのかな」……。

 そんな話をしながら、手元の箸袋を開いて「UNKING」と書いてM社長に手渡すと、「いいですね!運気のING(進行形)、運のKING(王様)とも読める。我らUnkingsでいきましょう!」と盛り上がったわけだ。

 ある雑誌でアイガモ農法の古野隆雄さんのインタビュー記事を読んだ。
 アイガモのヒナを田に放す。ヒナたちは害虫や雑草を食べ、フンは稲の養分になる。そして育った鴨も食肉になる。完全循環型のアイガモ農法を確立した古野さんは、「何度も壁にぶつかりながらも私がアイガモ農法を追求してきたのは、世のためと人のため以上に、自分の仕事を面白くしたかったから」と結んでいた。
 無農薬を実現するために苦労してつくった田んぼに、昨日まで元気に泳ぎ回っていたカモが、野犬たちに襲われて咬み殺されてしまった経験など、多くのジレンマに直面されても、あきらめずに挑戦を続けた古野さんの言葉だけに共感できる。最初にトイレの汚れやニオイの根源である尿石の存在を突き止めて以来、快適トイレを求めた我が格闘の日々と重なってくるからだ。

 その限りないほどの間口の広さと、無限に近い奥行きの深さに、驚きと尽きない関心を抱き続けさせてくれるのがトイレ。当然、パイオニアだからこそ、苦心惨憺し結果を出すのに何年もの時間がかかることもある。

 しかし「We are The Unkings.」 楽しく、面白く進み続けようではないか。

『FRANJA』(フランジャ)42号掲載 2007年11月15日発行

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