御手洗銀三のトイレコロジー
No.38 美しいトイレ、日本!

 「美しい国、日本。」我が国の安倍晋三総理大臣の政権構想である。
 高い理念でも、現実は「美しいもの」をなかなか評価しない。むしろ、醜いものを強調するのが高評価でもあるかのように・・・・・・。

 「今年も心機一転頑張ろう!」と新たな気持ちで新年を迎えたのだが、年頭から報じられるニュースは、見たくも聞きたくもないような事件ばかりだ。
 次々と明らかにされる政治家の不正な金の使い方。肉親による憎悪に満ちた悲惨な事件。そして、過去の教訓がなんら生かされず、杜撰な商品管理で企業倫理が問われ、消費者の信頼を失墜させる事件。
一方、世界に目を向けると相変わらず中東の戦乱は収まらず、そればかりか、フセイン処刑の様子がネット画面で流れる異常な世界。

 昨年末に、昨年を表す漢字で選ばれたのは「命」であったが、今年はどんな一文字で締めくくることができるのか。構想通りの「美」であって欲しい。「美しい」で思い起こせば、創業時に打ち立てた「トイレは美しくなければならない」という我が社の標語がある。今でも、世間では「トイレは臭いもの、汚いもの」というイメージが付きまとい、トイレに対する扱いは低い。
 食事の時に「便所の話」は失礼となる。小学校の罰当番は、決まって「便所掃除」と、大事なトイレを見下す。企業も、本社ビルや施設のトイレを掃除するのは「経営・管理に携わらない格下社員がする仕事だ」という感覚が今なお横行している。
 
混乱の時代だからこそ、経営者や管理者が率先して社内のトイレに目を向けるべきだ。汚れに気がついたら自らがブラシを手にする。高級な背広とネクタイは、決してトイレ掃除の免罪符にしない方がいい。

 この新年、耳を塞ぎたくなるようなニュースが続く中で、希望と勇気を与えた話があった。北海道・夕張市の青年たちの「手作りの成人式」だ。財政破綻で市民も役所も手詰まり状態の中で、若者達が成し遂げた成人式だ。「美しい日本!」の象徴である。誰もが元気になるような、自分もそんな生き方がしたいと思えるような希望に満ちた話が、当たり前の話題にならなくてはいけない。

 そして、食卓では美しいトイレが話題になり、街では感動的な美談が日常会話になる。
安倍総理、そんな国にしましょう!

『FRANJA』(フランジャ)38号掲載 2007年3月15日発行

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