御手洗銀三のトイレコロジー
No.31 小便器排除!?どうして男子便所を軽視するのか?

 進展著しい外食産業、私もお世話になることが多い。先日も、孫たちを連れてフランチャイズ(FC)を展開中のあ るレストランに立ち寄った。イタズラ盛りの孫たちが店内を飛び回るのを、何とか抑えながら食事をしたのだが、途中、孫のおしっこに同伴した。

 男子用トイレではあるが、洋式大便器ひとつだけである。これには、ちょっと弱った。
 やっと“立ちション”を教え始めたとはいえ、三歳児である。我が家では小便器でさせているので、洋便器での立ちションはあまり慣れていない。

 しかも、ここは便座を開いて皆が立って用を足す……大人たちの夢の跡ではないが、便器の縁や床には小便のしずくがそのまま。孫の垂れこぼしがないように「便器に近づいてしなさい!」とも言えずに、ハタと困った。
 可愛い孫に「勝手にやりなさい」と突き放すわけにもいかず、やむなくズボンを半分脱がし、抱きかかえて用を足させようとしたが、これが簡単ではないのだ。

 我が身にしても汚れた便器にズボンを触れたくない。しかし、洋便器の上空で二十`c近い体重の孫を抱えなくてはならない。抱える方は、足を開いて前かがみの態勢になる。それも重心を後ろに置けないほどの前かがみである。我が腰と腕力には自信があったが、辛い状況ではある。

 しかも、その態勢で、孫のおチンチンを正常な方に向けてやらなければいけない。おしっこが飛び出す方向によっては、どこ を汚すかも分からないのである。
 孫の小便に立ち会うのは、田舎の木立で連れションした時以来であるが、進展目覚しいレストランのトイレがこんなに使いにくいものか!をしっかりと味あわされたひと時であった。

 これからの外食産業を背負って立つ経営者の皆さんにお願いである。男子用トイレには、子供も使える小便器を、ぜひとも設置して欲しい。
「低いレベルに合わせるという『護送船団』的発想に立つことなく、より高いサービスでお客さまの満足を勝ち取っていく!」という話を、FC外食産業のスーパーバイザーが語っていたのを思い出した。トイレにもより高いサービスを願いたいものである。

『FRANJA』(フランジャ)31号掲載 2006年1月15日発行

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