御手洗銀三のトイレコロジー
No.29 飲食店を選ぶ条件

 仕事に入ると我が家で食卓を囲むより、外食することの方が多くなる。また、当社にはお客様がよく訪ねてくるので、そんな時の店の選定にはいつも心を砕いている。私が大事な客人の接待に使う飲食店を選ぶ際には、少なくとも、三つの条件をクリアしている店にしている。

 まずは「相手の食の嗜好」。お客様が和食、洋食、中華など、どのような食を好むかをお聞きし、和食ならば、おふくろの味が好みなのか、寿しが好きなのかまで尋ねてみる。

 次に「時間のゆとり」である。一緒に食事をした後のスケジュールが詰まっているか、多少のゆとりがあるのかによって選ぶ店は違ってくる。客人の時間がなければ、ファストフードを選択肢に入れるのも、もてなしの一つだと思っている。

 三つ目がその店の「お客に対するおもてなしの心があるや否や」を見定めるのである。

 つい先日、当社を訪ねていらしたお客様と一緒に、事務所近くの国道沿いの和食店に行った時のことである。いつも利用している和食店が臨時休業で、やむを得ず通りすがりに入った店だった。

 テーブルに座ったものの、なかなかオーダーを取りに来ない。そこで、目の合った店員を招いたところ、テーブルの脇に無言で寄ってきて、無言で立っているのである。
 注文を出すのは客側だからと、こちらのアクション待ちでもしているつもりか。客人の手前、我慢したものの「この店の従業員教育はどうなっているのか!」と、腹立たしく思った。マニュアルチックな薄っぺらな挨拶にも好感を持てないが、挨拶すら出来ない店員にはあきれてものが言えなかった。

 運ばれてくる料理はまあまあの味。しかし、食事を終えて、「もしや・・・・・・」と思いながら、トイレに行くと案の定、扉の外にまでアンモニア臭が漂っていた。不快感を覚えたと同時に、このような飲食店に客人をお連れした自分の失態に腹立ちを感じた。
 帰りのレジで、店長に一言と思ったが、その店長すら仏頂面で苦虫を噛み潰したような表情。「言ったところで不愉快になるだけ」と何も言わずに帰ってきた。
 しかし、当然のことながら私の「飲食店リスト」から外され、二度と足を運ぶことはないだろう。

『FRANJA』(フランジャ)29号掲載 2005年9月15日発売

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