御手洗銀三のトイレコロジー
No.28 うまい料理の裏にある不衛生の実態

 香港や中国の旅をすると、おいしい料理に満足するが、そんな料理を提供してくれる店も、ことトイレに関しては不衛生なところが多い。
 トラベル情報研究会が2000年に出版した「トイレの歩き方」にも、おいしい料理の裏にある水のからくりを見たと以下のようなリポートが載っていた。

 香港の小型船のレストランのトイレは用を足して流すと穴の部分がパカッと開く、昔の鉄道のような仕組みになっている。明らかに排泄物を海に垂れ流しているわけだ。この筆者は隣の船の調理場が見えたので別に見るともなく見ていると、忙しそうに働く人々の中に、バケツに紐をつけて海水を汲み上げている人がいたという。「もしかして……。そんな不安そうな視線を向けられているとも知らず、彼はその水を流し場へ移してお皿を洗い出した。嫌な予感は見事に的中してしまった」というのだ。

 香港は不衛生な場所が多いことで知られる。屋台では汚れた食器、水を張ったバケツの中でゆすぐだけというから驚きだ。筆者は「縁日の露店のおじさんが立ちションをして、手を洗わなかったのを目撃して以来、子供がいくら欲しがっても、屋台の物は絶対に食べさせてくれなかった我が母親を連れてきたら卒倒してしまうかも知れない。まさか排泄物を垂れ流している海水を食器洗いに使うとは。もしかしたら野菜などを洗うのにも使っているのかもという疑惑を抱いたが、その予感まで当たってしまったらつらくなるだけなので、それ以上の観察はやめた!」と記している。

 今、日本ではここまで不衛生なレストランはないと信じたい。が、結構、厨房の中はお客の側から見ると死角の空間である……。そこで、その店の清潔度を測る物差しはトイレの管理状況が手がかりになる。「臭い」、「汚い」そして「不衛生で恐い」と手も触れたくないトイレは、この日本の飲食店にも未だ溢れている。
 さあ、銀三もこれから「飲食店トイレ紀行」の旅に出よう!

『FRANJA』(フランジャ)28号掲載 2005年6月15日発売

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