御手洗銀三のトイレコロジー
No.20 平和に貢献するトイレ

 イラクの自衛隊派遣が現実のものとなってきた。先ず、行き先はサマーワだという。新聞もテレビもサマーワの取材が目に付くようになってきた。自衛隊の派遣目的は給水・公共施設の補修・医療施設の整備の三つの仕事だ。

  ところが、現地の取材によると、上下水道の補修とインフラ整備が最も大きな喫緊の要望らしい。確かに映像では、水道管が路上に首を出している。そこにホースをつなげて水を汲み上げるのだが、水の出てくる吐水管のすぐ脇には、生活排水や汚水が流れている。汲み上げた水は臭く、飲めば苦みのある異様な味らしい。大勢の大人や子供たちが、この飲み水で腹を壊し、死んでいるそうだ。

  また、公共施設の修復より、自分たちの住むところの修復をしてほしいという声も大きいという。そして、失業率五〇%の現状では、仕事が欲しいと……。

  サマーワの人々に、私たちのトイレの予防メンテナンスの手法を教えることができれば、現地の人々が抱えている課題は、確実に改善の方向に向かうのだが。

  なぜなら、予防メンテナンスというのは、衛生管理そのものの技術であり、生活が衛生化されることになる。そして、その衛生管理を維持する役割は人が担うため、そこでは、人々に仕事を生むことにもなる。トイレから貢献できることは多い。

  ただ、現在は、テロあり、言語問題あり。日本人が、誰でも簡単に現地へ行くことができる状況ではない。しかしできることなら、我々の持つ技能を伝えたいと思うのは私1人だけではないだろう。

  飲料水から排水までをコントロールできてこそ、安心・安全な街づくりに貢献できるのだから。

『FRANJA』(フランジャ)20号掲載 2004年2月16日発売

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