御手洗銀三のトイレコロジー
No.19 病気の予防はトイレから

 「HOSPEX JAPAN 2003」と称する、日本医療設備学会の主催する医療・福祉施設のための設備・機器総合展が、この11月に東京ビックサイトで開催された。今年で32回目の開催となるそうだが、これまでメンテナンスを含めたトイレの展示はほとんどなかった。昨年初めて「トイレメンテナンス研究会」が小さなブースを出展し、今年は同研究会のブースは二倍に拡大され、弊社も協力企業として出展した。

 本来、病院の治療は診断・診察から始まるのだから、トイレは最もその範疇ではないかと思われるが、その設備機器と関連サービスに注視し始めたのが今頃というのも少々驚きである。

 それに、つい最近まで、古い大病院ほどトイレは臭くて・汚くて・暗くて・恐いところが多かった。建て直しなどで一時は、きれいで清潔になったかのように見えるトイレでも、実はメンテナンス技能はさほど進歩していないのが実情だ。クサければ芳香剤設置でマスキング、汚れたら清掃(それすら放置されるところもある)、目に見えない感染対策は、ほどほどという病院が多い。

 やはり、最高の医療が予防医学であるように、病院のトイレこそ、予防メンテナンスを積極的に取り入れるべきだ。「汚れない・臭いを出さない仕組み」と、「感染予防の手法」を導入することが肝要なのである。

 高額な検査機器に投資して最先端医療を進めることも確かに大事だが、低いランニングコストで済む院内のトイレを健康状態に保つことを、まずは最優先してみてはどうだろう。
また、庭内か広々とした待合室に、小便小僧の水場でもあしらって「当院はトイレを安心して快適に使っていただけます」といった小粋な病院があれば、患者は安心して病院通いできるのではないか。

 水洗トイレが普及して、一見、清潔が保証されたように見えるトイレだが、病院のトイレには体力や免疫力が落ちている患者さんが出入り一するケースも多いだろう。感染症の感染源になる可能性を限りなくゼロにすることも、予防医学の一つだと認識してほしい。

『FRANJA』(フランジャ)19号掲載 2003年12月15日発売

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