御手洗銀三のトイレコロジー
No.14 デフレからの脱出作戦

 仕事柄、北は北海道、南は沖縄まで全国各地へ旅に出ることが多い。タクシーの運転手さんをはじめ、最近はどこに行っても誰と話しても、デフレや不況の話が定番だ(ちなみにアメニティの加盟店はみな元気!!)。

「景気はどうですか」「良くないね〜」は、今や、挨拶代わりの日常会話といってもいい。

 そんな時、私は「皆、不況が好きなのですかね?」と聞くことにしている。「勿論、好きなわけないでしょう」と返ってくるわけで、「じゃ、どうしたら儲かるかを考えたほうがいいですよ。好きでもない不景気のことをこぼしていると、お客様が逃げて貧乏神がやってきますよ」と切り返す。

 じゃあ、具体的にどうしたらよいかといえば、自らデフレに傾倒していく商売から抜け出すことだ。

 衝撃的な廉価は、商品やサービスから何かを削った結果で、廉価も時が経てば当たり前となる。そして、それを繰り返しているうちに、本来の商品やサービスはいびつになり、本質の価値を見失ってしまう不安は否めない。

 今は物があふれる時代で、安ければ買うという人がすべてではない。むしろ、今までタダ≠ニ思われていたものが、売れる時代になっていることを思い出してほしい。「空気」「水」「安全」「環境」などが、そのよい例だろう。

 ある企業の調査によると、日本人は今、安全に五千円、水に二千五百円、空気に二千百円を払ってもいいと考えているそうだ。人生を如何に健康で快適に過ごせるか、地球環境の大切さに、皆が大きな価値を認める時代になった。

 身の回りのものに目を凝らしてみると、無料と思われているものはいくらでもある。価値が無いから無料なのではない。「価値を認めないから無料」なのだ。

  そんなことを「人類の生活と生命を支える絶対的価値を持っているトイレ」の中で考えていた。
しかし、このトイレにかけるお金を惜しむ経営者が多い。「この不景気に、トイレに金などかけられない」と・・・・・・。

『FRANJA』(フランジャ)14号掲載 2003年2月15日発売

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