御手洗銀三のトイレコロジー
No.11 サッカー熱で占う 携帯トイレ需要

 ワールドカップは横浜で決勝戦が行われ、強豪ブラジルの優勝で幕を閉じた。

 その日の横浜は、国際スタジアムとその周辺で、手厚い警備態勢が敷かれた。顔や身体にペイントした陽気な外国人サポーターたちが「オマワリサン、ゴクローサン!」と叫ぶ。大勢の警察官や警備員たちが「止まらないでゆっくり進んで下さ〜い!」と歩行者の整理・警戒にあたっていた。新横浜にほど近い我が社にも、そのサッカー熱が伝わってきた。女性秘書は決勝戦のその日、ご苦労にもその雑踏の中に出かけていった。仕事でもなければ、入場券を持っての観戦でもない。単に、好奇心旺盛なヤジ馬が火事場を見に行くのと同じである。

また、六月九日の「日本・ロシア戦」には、末娘がブルーの応援Tシャツを着て、横浜市の文化体育館まで行って大画面を前に「ニッポン!ニッポン!」と騒いで帰ってきた。六月は、我が社も我が家も、皆、にわかサッカーファンと化し、「興味がない」などと言えば非国民的とまで言われかねない盛り上がりようであった。

七月早々に、韓国から知人が訪ねてきた。やはりサッカーが話題になり、テレビニュースでもよく取り上げられていた「光化門広場」の話におよんだ。夜の八時半からはじまる映像に、朝の九時頃から人が集まりだし、昼頃から、立錐の余地もない状態になったそうだ。トイレに行くために席を空けたら、たちまち席がなくなってしまう。自然と座りっぱなしが強要されたわけだ。では、試合が終わるまでトイレはどうしたのか?
用意されたのはビンや新聞紙、そして大量のウエスとゴミ袋。そう、皆、座ったその場所がトイレになったのだ。

そういえば、日本も日本戦の時には「試合中の水道料が半減した」と水道局が発表した。そして、試合終了とともに、平常の倍の水道が使われたという。
娘に聞いてみた。「トイレはどうしたんだ」「みんなトイレなんか行かなかったみたいよ。私なんか一回も行かなかったもの。汗になって飛んでいっちゃたのかな?」
国中でトイレを我慢するのがサッカー大国への道なのか……。

四年後にドイツで開催されるワールドカップには、使い捨ての携帯トイレを開発して売り込もう。さて、どこの国なら売れるのか……。そこには、次回の優勝国を占う重要なヒントが隠されている!?。

『FRANJA』(フランジャ)11号掲載 2002年8月15日発売

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