御手洗銀三のトイレコロジー
No.9 熱いハートが世の中を変える!

 二月中旬、年に一度の社長会を九州博多のホテルハイアットで開催した。そこには、北は北海道から南は沖縄までの加盟店の経営者たち四十人ほどが集まった。かつては建設、家電、衣料、船舶、外食、ダスコン、オシボリ、ビルメン、浄化槽、事務器、IT等々の第一線で活躍したメンバーで、まさに究極の異業種交流ともいえる会合。

 テーマは「不況とトイレとビジネスチャンス」と、一見して風変わりな題材。十一時から五時半まで会議は続いたが、なかでも、三時間にわたるパネルディスカッションでは、参加者も会場側の聞き手も全員が真剣で熱気にあふれ、トイレを熱く語る会となった。

 この日の朝、雪印食品が市場から撤退するニュースが流れていた。まさに、二十世紀を意気揚々と駆け抜けてきた大企業の最後である。雪印本社の衛生管理に端を発したBSE対策は、国が打ち出した肉牛買い取りの偽装工作から始まり、ほかにも肉の流通内市場に偽装発覚が広がった。しかも、手の内は込んでいて国産、輸入肉、賞味期限の品質偽装表示にまで広がっていたのである。これからも、新たなる疑惑が噴出する可能性を否定できない。この事件は、消費者に衝撃を与えたとともに、さまざまな教訓を生んだ。

 われわれトイレの予防型メンテナンスサービス事業には、嘘もごまかしもきかない。なぜなら結果は、目に見えて(臭くなって)現れるからである。しかし、人間とは弱いもの。だからこそ、大きくなればなるほど常にこうした会合を持って意思確認が必要なのだと実感した。今回の会合でも、アメニティネットワークの経営者たちの熱いハートを確認できた。
「今、我々がやろうとしていることは、二十一世紀の新しい文化を創造することだ」という強い自信が皆に満ち溢れていた。「トイレのあるべき姿に熱弁を奮い、口角泡を飛ばして激論を交わす」そこには、世の中を変えていこうという壮大な夢があったのである。

 頭は自己中心の思考に陥りやすく、胸は相手中心に思索ができる。そんなことを頭で整理しながらトイレに行った。
そして、尻で考えてみたら……なんと、地球が見えた。

『FRANJA』(フランジャ)9号掲載 2002年4月15日発売

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