御手洗銀三のトイレコロジー
No.5

やる気を起こすモノサシ、やる気を削ぐモノサシ


「グッド・トイレ・10」をご存知だろうか。
日本トイレ協会が、全国の自治体や公共施設のトイレの中から、毎年、優秀なトイレを十カ所選び顕彰する制度で、文字通り「快適公衆トイレ十傑」である。
今から十六年前、国鉄駅のトイレや道路公団サービスエリア、自治体の管理する公衆トイレは、どこも四K(臭い・汚い・恐い・暗い)の代表だった。街を歩いてトイレに行きたくなったら、一流ホテルやデパートを探し歩く・・・・・・。

当時、そんな実情を憂慮し、一家言持つ人たちが集まってはトイレ談義に花を咲かせていた。そのうち「われわれの力で公共トイレの実態改善に乗り出そう!」となった。
そして本格的に動き出したのが「トイレの日」の制定と「トイレシンポジウム」の開催、そして「グッド・トイレ・10」の顕彰制度だった。当然、このメンバーが発起人となって日本トイレ協会が結成され、今ではその名を全国に知られる任意団体へと成長している。

当初は、臭くて汚い四Kトイレの代表を「バッド・トイレ・10」に選び「自治体や管理者に反省を促そう」という強行意見が主力だった。しかし、議論が進むにつれて「良いトイレを広めることこそ効果大」という結論に至り「トイレを褒める勝手連」が出発した。
その効果は絶大で、駅や高速道路のSA、PAのトイレが次々とリニューアルされ、利用者のためのサービス施設に様変わり。一部の自治体も「トイレ先進都市」を競い合うようになったのである。
本誌前号で、「FC本部格付け騒動の顛末」を読んだ。いわば「FC評価の勝手連」の顛末だが、問題は、そのFC本部の生い立ちやコンセプトを十分調べることなく、現況の数値を大雑把に捉えて断定したことにある。

この勝手な判断がFC本部はもちろん、FC関係者に間違ったシグナルを与えることを懸念している。深刻なデフレ経済の中で、新たな事業を立ち上げようとしている関係者に杭を打つ″s為は、かつて、トイレ協会が世直しのためと意気高揚し「バッド・トイレ・10」で吊るし上げによる改革に気持ちが走った時期と似ている。
比較するのに物差しを使うのは当然。だが、好例を誉めヤル気を起こさせるのか、冷厳に問題点を公表するのが良いのか・・・・・・。
今の日本を元気にすることこそ、誇り高き仕事と思いたい。

『FRANJA』(フランジャ)5号掲載 2001年8月15日発売

御手洗銀三のトイレ談論へ