御手洗銀三のトイレコロジー
No.3

名は職を顕すビジネスネーム


鈴木雪隠、溝渕於丸、菊知厠子、安江手水媛、森 不浄・・・等々、我が社の社員達はトイレにちなんだビジネスネームを皆がもっている。勿論、親から貰った大事な名前は本名として通常は使用しているが、営業先ではお客様にビジネスネームで覚えて頂く方がどうやら効果的なようだ。
1億2000万人の日本人の名前は、家や個の文化に影響されながらつけられているから、名前の由来も又その生まれも育ちもそれぞれ違う。そんな一人一人の個性を象徴するものが名前だとしたら、本当に名前をもった人間の文化は素晴らしいものだと感心する。

しかし、ビジネスの世界は個性の主張よりも、お客様の主張を大事にする世界だ。
であれば、名前だってお客様に簡単に覚えて頂く方が親切だ。名前から職業も判別できたらお客様にとっても便利に違いない。

現実に、芸能の世界でも人気をとるために芸名をつける。日常生活の中でも、「洗濯やのたけちゃん」とか「八百屋のおじさん」と使っているし、飲み屋の暖簾をくぐれば「マスター」「ママさん」が常識のようである。
そこで、我が社でもトイレサービスの専門店として、社員に相応しい名前をと考えてつくられたのが、はじめに出てきたビジネスネームである。暫く会わなくてお客様が忘れていても「オテアライギンゾウです。」と言えば、「あー、トイレサービスの専門店ね」とすぐに思い出して頂けるからありがたい。

私の机には、何百枚という名刺が常時置いてあるが、この中で、名前を見てすぐに顔を思い出せるのは何十枚かである。営業は人間関係を最も大事にすることから出発するのであれば、最初の出会いに覚えて頂く事から始めなければならない。よっぽど顔に自信があるならば別であるが、ビジネス用の名前をもつことの有効性は計り知れないものがある。

『FRANJA』(フランジャ)3号掲載 2001年4月15日発売

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