御手洗銀三のトイレコロジー
No.1

トイレのIT革命は?


世はIT is money.アイティ≠ニ読むかイット≠ニ読むかはお任せするとして、ITの急進的な技術革新によって頭の上を膨大な情報が往来している。

若い者には負けないぞ!と私もパソコンをはじめたが、実のところ息が切れる。膨大な情報の中から意図した情報が取れない、もうその時点で胸が苦しくなる。今のところ宝くじよりは確率が良くなったのだが。
It is toilet.私は25年間、トイレという課題に挑戦してきたが、未だにWhat is toilet?の世界だ。トイレの文化、歴史、民度、法律、災害、知れば知るほど奥が深く、その幅はとどまる所がない。大学で専門学部を設けても良いほどの内容だ。

それなのにトイレを専門とした産業が何故か無い。衣食住や教育・医療・情報そしてレジャー等々、あらゆるジャンルで数え切れないほどの企業が存在するのに。20世紀のトイレは、産業世界から見放されていたといってもいい。
日本人ばかりか人口60億を超えるといわれる世界で「排泄の場であるトイレを必要としない」と言う人間は1人もいない筈だ。

これほどまでに、情報があふれ技術が躍進する中で、トイレだけが置き去りにされた。
将来を託す子供たちに目を向けるとその事がわかる。子供達の学校には、新しいパソコンがずらりと並んだ教室ができる。一方で、その多くの学校のトイレは「臭くて汚くて暗くて恐い」という状況が放置されている。

その結果、学校でトイレを我慢する子供たちの如何に多いことか・・・。
先生も親も教えてくれないトイレの文化、そして、心有る先生達が「子供たちのトイレをきれいに快適に使わせる予算を組んで欲しい」と陳情しても「金が無い」といとも簡単に却下する役人達。
目先の事に流行る大人たちの世界が、キレル子供たち、そして犯罪の凶暴化へとつながらないと誰が保証できるだろうか。

今、日本トイレ協会で始まった「学校トイレ出前教室」が、子供たちのトイレの悩み解消に動き出した。21世紀はトイレからIT革命を見ることにしよう。

『FRANJA』(フランジャ)創刊号掲載 2000年12月15日発売

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